Web担当者のための一歩先行くWeb講座 第4回

誰でもコンテンツを作れるようにルール化しよう

全員がルールを共有できる「ガイドライン」

担当者と業務手順をまとめて、原稿フォーマットを配布し、「依頼がスムーズになってきた」と思ったのも束の間。担当が異動したり、新しい担当者が増えたりして、ルールを守ってくれない人が出てきます。説明するのをちょっとサボると、せっかく決めたフォーマットが使われなくなってしまいます。それでは元の木阿弥です。防ぐ為には、担当が変わった直後に説明をすることが必要です。しかし、個別にやるのは面倒です。

複数の担当者から同じ様なことを質問されるのも辛いでしょう。新しいブラウザで見られないといったトラブルや新しい機能を使って表現してみたい、外部に依頼する時のルールを教えて欲しい、等々。「サポートセンターじゃないんだ」とぼやきたくなることも一度や二度ではないでしょう。繰り返し説明する手間を少しでも減らすなら、デザインのルールなど、すでに決まっていることは、他の人にわかるようにしておきましょう。

Webサイトに関係する「ルール」をまとめた担当者向けの「ガイドライン」を作成するのです。「ガイドライン」は、Webサイトを運営する上で、守るのが好ましいとされる規範(ルール・マナー)や目指すべき目標などを明文化し共通の方向性を与えます。担当になった人に最初に読んでもらうようにします。必要に応じてポイントだけ説明すれば良くなるので、短期間で引き継ぎができるようになります。

「ガイドラインなんて、とっくの昔に作成している」という人もいるでしょう。しかし、それは作成後に更新されているでしょうか?ガイドラインは、一度作って終わりではありません。Webサイトの成長に合わせて、見直しが必要です。端末の進化やコンテンツの拡充に伴う、新しいルールの追加はもちろん、問い合わせが多いところは、補足説明を追加するなど、常に手を入れて最新化しなければ「使えるガイドライン」とは言えません。

必要な「ガイドライン」は大きく分けて2つ

ガイドライン化するのは、「制作のルール」と「業務のルール」の2つです。運用において、切っても切れない関係なので、両方揃って始めて使えるガイドラインとなります。

「デザインガイドライン」は、一貫性のある構造、ナビゲーション、ビジュアルのトーン&マナー、HTMLのコーディングルールなどを規定します。さらに詳細な目的で、ユーザビリティガイドライン、アクセシビリティガイドラインなどを定めることもあります。チェックの基準としてユーザー環境も定める必要があります。デバイス、OS、ブラウザなど、技術的な内容も含むので、制作者が理解できるように、専門家に依頼して作成した方が早いでしょう。

サイトの業務は「運用ガイドライン」で規定します。依頼から承認、公開までの業務手順、前回作成した「原稿フォーマット」も含まれます。サーバー、システムの利用ルール、ツールの利用方法(フォームやアンケート、メール配信など)、いざというときのトラブルの緊急対応手順、関係者の連絡先など。個人情報を扱う際の注意事項、ソーシャルメディアを扱う際の注意事項といったリスク管理も必要です。

「ガイドライン」は、担当者がいつでも参照できるようにしておく必要があります。プリントで配布してもよいのですが、デジタルデータをすぐに渡せるようにしていたほうが良いでしょう。共有のイントラやフォルダがあれば、アップして告知しましょう。定期的な更新が必要になるので、担当者のメーリングリストを設定しておけば、後々も連絡がしやすくなります。

これらは、社内にいる人しかできないことなので、担当者が率先してまとめなければなりません。初めからすべてを網羅して完璧なものを作ろうとすると、いつになってもリリースできなくなります。今困っていること、問い合わせが多いところから、はじめてみましょう。ガイドラインとして明文化する作業を行うと、曖昧だった点がいくつも見つかるはずです。それを一つ一つ明確化していくことで、業務の中で注意すべきポイントが見えてきます。「ガイドライン」は、複数の担当者が関わる企業Webサイトを運営していくために必携のものなのです。