Web担当者のための一歩先行くWeb講座 第6回

なぜリニューアルをするのか?

リニューアルは難しいプロジェクト

弊社では、毎日のように「リニューアルしたい」という相談を受けます。その際、まず、どうしてリニューアルをしたいのか?と確認します。「デザインを変えたい」「使いやすくしたい」「問い合わせ・申し込みを増やしたい」などの理由が帰ってきます。「運用を楽にしたい」「ページ制作を内製化してコスト削減したい」といった運営側の悩みをきっかけにしたものもあります。全面的にWebサイトを見直す「リニューアル」は、今ある問題を全て解決できる「魔法の杖」のようにイメージされていることがよくあります。

しかし、リニューアルにはデメリットもあるのです。多少使い難いサイトであるにせよ、長く使われていたUIを変更するのは、少なからずユーザーに負担を強いることになります。トレンドを意識したデザインに変えても、全てのユーザーが気に入るとは限りません。中には否定的な意見もあるでしょう。構造の見直しでURLが変わる場合、URLの移行をきちんと対処しないと、せっかく貼られた有効な被リンクを無駄にして、検索エンジンの表示順位が下がることもあります。リニューアルで、当初やりたいと考えたこともコストや時間の制約で、大部分が先送りされて、結局何が変わったの?というプロジェクトも散見されます。

そもそも、リニューアルせずとも、今あるWebサイトを出来る範囲で丹念に改善するだけで成果が上がることも結構多いのです。それなら、リスクを背負ってでも、リニューアルをする意味あるのでしょうか?

リニューアルを「大きな改修」と考えると失敗する

住宅に例えるとサイト改善は「模様替え・リフォーム」、リニューアルは「引っ越し・建て替え」です。

引っ越しの理由としてよくあるのは、子供が増えて、部屋が足りなくなったこと。必要なスペースが確保できる家を探して引越します。子供が大きくなったら「模様替え」をすることはあります。歳をとったので、住まい方を変える場合も、バリアフリー住宅にするなら、リフォームでできますが、2世帯住宅ならば「建て替え」が必要になります。

「模様替え・リフォーム」なら、これまでの延長で、生活によりフィットするように変えます。でも「引っ越し・建て替え」の場合は、新しい家を得るとともに、生活や習慣も大きく変わることになります。

Webサイトのリニューアルも同様に、今までの延長で改善して成果を出すことではなく、これまでのやり方やサイトの枠組みを、すべて取り払った「更地」の状態から、新たにWebサイトを作り上げ、「今までできなかったことを、できるようにする」新しい価値を生み出すしていくための作業なのです。だから、リニューアルはプロジェクトの進め方によっては、成果が出ないどころか、今より悪くなる可能性だってあるのです。

リニューアルの失敗のほとんどは、「今までやっていたことを前提に、リニューアルを組み立てる」からです。なぜなのか?今までのやり方に少なからず問題があったから、成果が出なかったのです。それに、今までやっていたことが仮に問題が無かったことでも、将来的に正解とは限らないのです。今までのやり方は変えたく無い、でも今までできなかったような成果を上げたい、というのは矛盾しています。

リニューアルをする理由を明確にすべき

リニューアルをする前に、Webサイトを使って、どんな新しいビジネスやサービスに取り組むのか?それは会社、事業の方向性と合っているのか?ユーザーにとってメリットがあるのか?そういったWebサイトの方向性を考えてからプロジェクトを立ち上げるべきです。

そして、Webサイトに関わるメンバー全員が、この方向性を共有した上で、プロジェクトに取り組まなければなりません。そうしないと、リニューアルの議論が噛みあわなかったり、迷いが生じて無駄なコストがかかったりします。結果として公開したサイトが思ったような出来ではなかったとしても後の祭りなのです。