Web担当者のための一歩先行くWeb講座 第7回

企業側の都合で情報発信していませんか?

企業が「伝えていること」と、ユーザーが「求めること」とのギャップ

Webサイトにとって、来訪するユーザーが一番大事だということに異論があるWeb担当者はいないと思います。Webサイトには、ユーザーが期待する情報を選んで掲載しているはずです。それなのに、ユーザーにアンケートをすると「情報が足りない」「分かり難い」という結果が出てしまいます。なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか?

それは、Webサイトで企業がユーザーに「伝えていること」と、ユーザーが企業に「求めること」にギャップがあるからです。

例えば、Webサイトに情報を掲載する場合、あなたの会社では「出す」「出さない」はどのように検討されているでしょうか?多いパターンは、会社案内や製品パンフレット、カタログなど、これまで様々な目的で作られた印刷物をWebサイトの原稿としてそのまま掲載することです。

すでに社内承認は済んでいるし、写真やテキストなど材料もそろっています。これならすぐにWebサイトに出せます。逆に掲載されていない情報は、社内のコンセンサスがとれていないから出せない、という判断になります。Webサイトで一から掲載する情報を集めなおすのは時間もコストもかかります。しかし、それでWebサイトを訪問するユーザーのニーズを満たしていると言えるでしょうか?

既存資料では、Webサイトのニーズに応えられない

既存の印刷物は、来店者とか営業マンの説明用など、ある程度目的が明確なターゲットを想定して作られています。紙面の制限もあるために、説明を省いたり、特定の箇所を強調して編集されています。

例えば、店頭に置かれるパンフレットやチラシは、手に取ってもらえるように目立つことを重視して作られています。情報も訴求したいもののみに絞られており、細かいところは書いてありません。店員がフォローすることを想定されているためです。Webサイトで情報収集に来たユーザーにとっては、省かれた情報が知りたい内容かもしれません。

カタログの情報をカテゴリーに整理してWebサイトに並べるだけではダメなのです。なぜなら、カタログとWebサイトでは情報の探し方が異なるからです。カタログは分厚くてもパラパラめくることで必要な情報を見つけることができます。しかし、その内容をそのまま流用すれば、階層が深くてなかなか情報が見つからないWebサイトとなってしまうでしょう。たとえ見つかったとしても、購入を考えている特定のユーザーにとって大事なポイントは、強調された特長ではなく、小さい文字で書かれている内容かもしれません。

さらに、複数のパンフレットやカタログを集めてWebサイトを作ると、統一感がなくなることが多くあります。一見同じように見えるものでも、制作時期や制作担当者によって内容や構成が微妙に異なっていることが多々あります。最大公約数で揃えようとするとあちこちに情報が足りなくなります。製品によって表示される項目が統一されていないと、ユーザーは比較することができず不便です。

わざわざWebサイトにアクセスするユーザーには目的があります。すでにパンフレットやカタログから情報を得ていることも多いです。そのようなユーザーは、Webサイトにより深い情報提供を求めています。にもかかわらず、使いにくいばかりで、求める情報が見つからないのでは、2度とアクセスしなくなってしまいます。

そもそも印刷物を無理矢理サイトにしようとしても限界があります。目的や利用シーンが異なると必要な情報も異なるからです。情報が掲載されていれば、ユーザーが勝手に見つけてくれるわけではありません。他の媒体で編集された情報を、そのまま開示しているだけでは、Webサイトで求められているニーズに答えることは困難です。

情報が掲載されいれば何でも良いのという訳ではなく、Webサイトにあったコンテンツを積極的に作成して発信していくことが求められます。実際、ユーザーが求める情報の中で、ポリシーや企業戦略上「出せない」といった情報はごくわずかです。ほとんどの場合は「準備されていないから出せない」だけなのです。

「ユーザー視点」のサービスを目指すべき

企業が「今できること」を基準にして、Webサイトを考えてしまうと、ユーザーのニーズに応えるどころか、企業側からみた「都合の良いユーザー」に向けて情報発信をすることになってしまいます。

これを防ぐためにWeb担当者は、企業側からの視点ではなく、「ユーザー視点」でWebサイトのサービスやコンテンツを組み立てることが不可欠です。ここでいう「ユーザー視点」とは、お客様の不便を解消し、お客様のやりたいことを達成する支援をすることです。

必要な情報が掲載されていることはもちろん、Webサイトならではの表現で、ユーザーの興味を引き出すコンテンツを目指すべきです。誤解を招きがちなのは、きれいなグラフィックやアニメーションが、Webらしい表現ということではありません。必然性がなければ見向きもされません。

例えば、コールセンターや電話には、毎日質問や要望が入っていると思います。大きなリニューアルや会社として判断すべき事項もあると思いますが、その多くは、Webサイトに一文追加すること、掲載箇所を少し変えるだけで、対応できるような要望です。一番簡単な解決法は「よくある質問」のコーナーを設けて、問い合わせ内容を片っ端から掲載することです。まずはユーザーの疑問を一つでも解消できるWebサイトにしていくべきです。

Webサイトの役割とは、ユーザーが困っていることを解決してあげることです。Webサイトは本来、企業が「出せる情報」を掲載しておくだけの場所ではなく、ユーザーが実現したいことをサポートする存在であるべきなのです。Webサイトのサポートでユーザーに満足してもらうこと。それが、企業のファンを増やし、ブランドを向上させることに繋がるのです。